◇「認知症の恐れ」の全員に医師の診断を義務化など
75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に認知症の度合いの確認を強化する改正道路交通法が11日の衆院本会議で可決、成立した。免許更新時の検査で認知症の疑いがあると判断された全員に医師による診断を義務化し、問題なく更新された後も違反があれば検査を受ける制度が新設される。公布から2年以内に施行する。
道交法は従来、認知症の場合の運転を禁じている。現行制度では、75歳以上で免許を更新する場合、高齢者講習の前に認知機能検査を受ける必要があり、進行度を「認知症の恐れがある」(第1分類)▽「認知機能が低下している恐れがある」(第2分類)▽「低下している恐れがない」(第3分類)−−の3段階に分けている。しかし第1分類と判定されても、過去1年間に逆走などの違反がなければ医師の診断を受ける必要がなかった。
これに対し、改正道交法は、第1分類と判定された人に対して違反経験の有無にかかわらず医師の診断を求め、認知症と診断されると免許は取り消し・停止となる。また第2、第3分類の場合も、その後に一定の違反をすれば臨時の認知機能検査が義務づけられる。
警察庁によると、75歳以上の免許保有者は約425万人(2013年末)。13年に認知機能検査を受けた約145万人のうち約3万5000人が第1分類と判定されたが、医師の診断を受けたのは524人だけで、最終的に免許を取り消し・停止されたのは118人だった。
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昨今、高速道路を逆走する高齢運転者が世間で取り上げられ社会問題になりました。
そこで、道路交通法が改正され、11日の衆院本会議で可決、成立しました。
理解力や判断力が低下する高齢者にたいする対策が強化されて、法制化されることは、本当に良いことだと思います。
私も自分の父が認知症になり、老人の車の運転問題に対して切実な関心を持つ前であれば〜
「お上も、認知症老人の運転に対していろいろ考えているんだ!これからは、もうこれでウチの親が呆けてきても大丈夫だね!!」
〜なんて上記の記事を読んで、思って安心していたことでしょう。
おそらく自分の親が認知症気味でない普通の人の感覚は、そんな感じなのではないでしょうか?
しかし、自分の親が認知症になり、車の運転を止めさせることに真面目に対峙しなければならなくなった経験を持つ者としては、上記の記事が放つ「高齢者の運転問題に対する印象」に対しては、かなり危惧しています。
(言い方を変えれば、かなり留意して認識しておく必要があると言えるのです。)
<透けるお上の本音>
老人の運転問題を実際に経験した者として、この記事から感じられるのは〜
「社会問題化しちゃったから、何もしないわけにはいかないだろう。」
「対策を強化したという事で批判をやわらげろ!」
〜といった国交省や警察のお役人の本音が透けて見えているように思えてなりません。
そもそも、道交法では「認知症」の場合「免許は取消、停止になる」ことになっているのです。
素人の感覚では、認知症の診断受けたら「免許は取消、停止になる」と思ってしまいます・・・
自分の親が認知症の診断を受ければ、当然警察に申し出れば「免許を取り消したり、停止してくれる」と期待して警察に行ってみても、実際の運用の現場では、そうは問屋が卸しませんでした。
私の父も認知症の診断を受けたので、警察に相談してみても、免許取消処分にはしてくれません。
人権上の配慮等の関係もあり、警察としても実態としては、やりたがりません。
結果、自主返納を奨められます。
というかそれが家族の義務!当然!という感じに言われます。
(実際免許は取り上げてくれませんでしが、それでも警察には、免許の「自主返納」についての手助けをして頂きましたので、感謝しております、ハイ・・・)
ところで、父の経緯をもう少し記載しておくと・・・
そもそも認知症という医師の診断をもらう一か月前程に、父の免許更新があったので、家族としては「75歳以上は更新に検査が導入されたらしいから、父のこんな理解力・判断力の状況では、きっと更新できないだろう!」などと軽く考えていました。
しかしながら、結果は違い!
病院で認知症の診断が出る老人ですら、アッサリ免許更新できてしまうのです。
上記の記事にもあるように〜
「 警察庁によると、75歳以上の免許保有者は約425万人(2013年末)。13年に認知機能検査を受けた約145万人のうち約3万5000人が第1分類と判定されたが、医師の診断を受けたのは524人だけで、最終的に免許を取り消し・停止されたのは118人だった。」
〜今までの道交法の運用では、一年で「免許を取り消し・停止されたのは118人」だったわけです。
正直言って、ほとんど0%、取り消されたり停止されるのは、宝くじみたいな確率だったのです。
今後は、道交法が改正されて、今後は第一分類に判定される人達については、もうすこし厳しくなるのは良いのですが・・
<75歳以上の免許更新について、ご家族が認識しておくべきこととは!>
ここで気を付けなければいけないのは「75歳以上の老人が検査を受け、約145万2千人のうち約3万5千人が1分類」という点です。
たった2%くらいに過ぎません!
個人的には、どう考えても少なすぎるとしか思えないのですが・・・
今後も「75歳以上の老人が検査を受けて、98%の免許更新に来た老人は第一分類にすらならない」ことは変わりません。
これは、高齢者の家族は肝に銘じておかなければなりません。
免許更新時の認知機能検査は、本当に相当程度進んだ認知症で、どう考えても「こりゃだめだ」というレベルのごく僅かな人しかスクリーニングされません。
大多数の認知症老人は、逆に、大手を振ってお上からの「免許皆伝」を受け取る結果になってしまいます!
切実な問題に直面していない方にとっては「どうでもいいジャン!」という感じでしょうが・・・
自分の親が認知症で運転を止めさせたいといった切実な状況の方にとっては、本当に大問題で、大きなネックになります!
「免許更新できる」ということは「お上が、まだあなたは運転して良いですよ!」とお墨付きを与えてくれることと同じわけですから、認知症高齢者本人を、どれだけ勢い付かせてしまうことか・・・
実際に、私も父が免許を更新できてしまい、愕然として(時すでに遅く)ようやく知ったのですが・・・
認知症の診断が出ている高齢者のご家族は、免許更新の前に、警察や免許試験場と相談して、免許の更新をストップしてもらう方向で働きかけることが有効(大事)なのです。
現在、認知症の親の運転免許問題でお困りで、免許更新の近い方は是非参考にして下さい。
決して「認知症の診断も出ているし、更新されるはずがない!」なんて一人合点してはいけませんよ!!
たとえ、今後改正道路交通法で対策が取られたとしても、警察・国交省も免許を認知症高齢者から取り上げるという強権的な措置は積極的にはやりたがりませんので、本当に一握りの、今にも事故を起しそうな酷い認知症の患者に限られるでしょう。
さすがに、今のように免許取消や停止がたったの「118人」率にして「0.008%」という機能停止状態よりは良くなるのでしょうが・・・
そもそも改正道交法では対策として「医師の診断を受けさせる・・・」と気軽に書いてありますが、病識の無いことが多い認知症患者が医師の診断を簡単に受けるものやら?
受けない場合、強制的に免許更新させないことができるのかしら?
いずれにせよ、現在そうであるように「認知症の診断が出ている老人でも大多数の人は、免許更新に行くと免許更新が出来てしまう」という状態は、大きな変化はないでしょう。
【結論】
上記の記事を読んで「うちの親が認知症になってももう大丈夫!お上が対策してくれているし!」などと思い込まない事です。
今までよりは、多少高齢者の運転について対策が図られることは確かですが、その対象になって免許の更新が出来ず「取消・免停」になるのは「氷山の一角」に過ぎないことを知っておきましょう!
認知症の診断が出ている親の運転をやめさせたいというような切実なご家族は、特に!
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