賃貸住宅で家賃滞納者を強制的に追い出す行為が問題となっているが、一方で悪質な入居者による家賃未払いが相次ぎ、不動産業者側が対応に苦慮している実態はあまり知られていない。さまざまな理由をつけて家賃を払わず、夜逃げ同然に姿を消す入居者。裁判に持ち込んでも相手に支払い能力がなかったり、法的な制約があったりで滞納分が返ってくるケースはほとんどない。年間数千万円の被害を“かぶる”業者もおり、経営を圧迫する事態にもなっているが、抜本的な解決策がないのが実情だ。
昨年11月、家賃滞納者の退去をめぐる訴訟の判決が大阪地裁であった。家賃を滞納すれば、借り主に無断で部屋の鍵の交換や持ち物の処分ができると定めた契約条項が消費者契約法に違反するとして、NPO法人「消費者支援機構関西」が不動産開発・管理会社「明来(あき)」(大阪市)に条項の使用差し止めを求めたのだ。いわば、賃貸業者の「追い出し行為」の違法性を問う訴訟だったが、大阪地裁は「すでに条項を使用しないと表明している」などとして、ほとんどの原告側請求を棄却した(原告側は控訴)。
消費者契約法は第10条で「消費者の利益を一方的に害する行為は無効とする」などと定めており、強制的な追い出し行為はこれに当たる可能性がある。しかし今回の訴訟や賃貸業者側の主張を通して見えてきたのは、確信犯的に家賃を払わなかったり、「ごね得」を通したりと、入居者側にも悪質な行為が多々あるという実態。いわば“モンスター店子”ともいうべき借り主たちの存在だ。
「最初から家賃を踏み倒すつもりで借りる人もいる。借りたその月から払わず、電話連絡しても出ないし、督促状を郵送しても音沙汰なし。入居の際には収入や保証人などをチェックするが、最後は“飛んで”しまう(未納のまま姿を消し所在地が分からなくなる)借り主が多く、打つ手がない」。同社の藤田精(たくみ)社長はこう話す。
同社によると、管理する約3000室のうち、約30%は家賃を滞納したり、督促してやっと入金されたりと、何らかの問題がある入居者だという。さらに全体の3〜5%が支払う意思がないなど「完全滞納」に該当。年間でそうした悪質な滞納は40〜50件、滞納額は約2000万円にも上るという。
具体的な事例からは、入居者のあきれるばかりのモラル欠如の実態が見て取れる。20代前半の風俗関係の女性は家賃15万円の1LDKの部屋に入居していたが、家賃滞納が続き、支払い督促にも応じず、滞納額や退去時の支払額の合計が160万円を超えた。その結果、明来側が家賃などの支払いを求め、相手側も督促で苦痛を感じたとして慰謝料を求めるなど双方が提訴する事態に。結局、明来側が勝訴したが、女性は転居し所在が分からなくなり、未納分は返ってこなかった。
20代半ばの水商売の女性の場合、家賃を3カ月滞納、連絡にも応答しなくなった。担当者が部屋を見に行くと中から犬のなき声が聞こえる。どうやら飼い犬を室内に残してどこかへ行ったようだ。数日間様子を見たが、部屋への出入りが確認できなかったため犬を保護した。ところがその後に女性が現れ、「犬を盗まれた」と警察に訴えた結果、和解金を支払うはめになったという。
このほか、「上階の人がうるさいが、対応してくれなかった」「(督促を受けた時)こちらから電話したが、担当者が来なかった」など、あれこれ“難癖”をつけ家賃を払わないクレーマーのような入居者も多い。
昨年、家賃3カ月分など30万円を滞納して“逃げた”20代の男性については、保証人からたどって居場所を発見。支払いの訴訟を起こし簡裁、地裁と勝訴したが、いまだに滞納分の支払いはないという。訴訟で男性側は「換気扇に雨が当たる音がうるさく、管理ができていない」などと細かくクレームをつけてきたが、認められなかった。
明来の担当者は「裁判に持ち込んでも判決まで数年かかることがある。経費がかさむし、部屋を開けてない入居者との係争ではその間の家賃も払われない。たとえ勝っても相手がいなくなったり、支払い能力がなかったりで未払いの額が返ってくることはまれで、労多くしてメリットはあまりない」と嘆く。
入居者が“飛んで”しまったようなケースでも通常、部屋を鍵で開けたり、残った荷物や家具を整理するのは裁判所の手続きを踏んで行うが、それだと家賃などが保証されないまま数カ月かかることが多い。そこで業者側の判断で電話連絡や督促の郵送、部屋への出入り確認など手順を踏んだ上で部屋へ立ち入り、写真を撮ったり、荷物を倉庫で保管したりする場合もある。
のちのトラブルを避けるためのやむを得ぬ手段だが、それでもトラブルは起きる。連絡のとれなくなった入居者の女性の部屋を調べたところ、ゴミ袋が3つあった。完全に出ていったと判断し、それらを処分したところ、半年ほどたって女性が現れ、「袋の中には百数十万円のブランドものバッグが入っていた」として損害賠償請求を起こされたという。
不動産・賃貸業界の関係者によると、業者と借り主の関係でいえば、どうしても“弱者”である消費者を守るという観点から借り主が「善」、業者が「悪」というイメージでとらえられてきた面があるという。
しかし、藤田社長は「わざと滞納しても3カ月程度で追い出すことはできないと、消費者契約法を逆手にとって確信犯的に家賃を滞納する悪質な借り主が増えている。分不相応な高額の部屋を借りている人に多く、こちらが安い部屋に移ることを提案しても聞く耳を持たない」と実情を明かす。
それでも、賃貸業者側が不正の実態を根気よく訴えてきたことで、最近は裁判でも業者の主張を認める判例が増えてきたという。裏を返せば、それだけ店子の不正が目立っているということかもしれない。
「わざと滞納する人はよそに移っても同じことをやっている。これまで民事訴訟で対応してきたが、悪質なケースには詐欺罪適用が認めらるようになってほしい」と藤田社長。スーパーの万引被害などと同様、家賃の未回収は賃貸業者の経営を圧迫する事態ともなるだけに、深刻な問題だ。
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<家賃滞納によるトラブルが増加、 年金生活、失業、連帯保証人など理由はさまざま> 2013年03月10日 MONEYzine
突然の失職後に家賃滞納、住居の退去を求められるといったケースが増加している。
年金暮らしで収入が少ない、失業してしまったなど、さまざまな理由から、賃貸アパート・マンションの家賃が支払えなくなり、賃貸人・不動産会社・保証会社などとトラブルになるケースが増えている。
国民生活センターは2月28日、各種相談の件数や傾向で「家賃の滞納」が増加していると明らかにした。
最近の事例では「転職により、給料が当月払いから翌月払いに変わるため、1カ月無収入になってしまう。家賃の支払いが心配だ。緊急に生活費を貸し出してくれる窓口はあるか」、「失職し今月分の家賃を滞納したら、『敷金は家賃に充当しない。明後日までに支払ってほしい』と仲介業者に言われ困っている」など、突然の失職が原因というケースが多く、金銭的に切迫している様子がうかがえる。
そこで、家主や管理会社が解決策の提案を持ちかけるものの、「滞納家賃を払えないので賃貸マンションを退去したいが、管理会社は退去しないで生活保護を受けるよう勧める」、「賃貸マンションの家賃を3カ月滞納しており、保証会社から解約の話し合いをしたいと言われたが、子どもの通学などを考えると退去したくない」として、解決方法に納得がいかないといった事例も見られる。
また、「一人暮らしの息子が賃貸アパートの家賃の支払いが遅れたらしく、親である自分に滞納家賃の請求がきた。連帯保証人ではないが、支払い義務はあるか」、「離婚した元夫が私名義で契約したアパートに居座り、家賃を滞納している。家賃の支払い請求が私にくるので困っている」として、家族が支払えなくなったため、その請求が相談者の元に届いたというケースもあった。
さらに「賃貸アパートの家賃の支払いが1カ月遅れることを伝えたら、保証会社から『追い出す』と脅された。どうすれば良いか」、「賃貸アパートの家賃を滞納した。話し合いで一部を支払うよう言われたが支払えなかったところ嫌がらせをされた。どうすればいいか」として、精神的にダメージを受ける被害も報告されている。
トラブルの理由はさまざまで、一つの原因や解決策があるわけではないが、この背景には長引く不況が影響しているといえそうだ。
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<ゼロゼロ物件増加で厳しい大家さんの懐事情> MONEYzine 2012年09月09日
家の購入理由1位は「家賃がもったいない」
敷金や礼金がゼロの物件が増加し、賃貸事業の環境が厳しくなる一方で、「家賃がもったいない」と住まい購入に動いている人もいるようだ。
不動産と住宅情報のポータルサイトを運営するネクストは、2012年7月度「首都圏版HOME’Sマーケットレポート」で、首都圏(東京都、神奈川・埼玉・千葉県)の賃貸マンションに関する調査を行い、その結果を8月29日に発表した。
まず、賃貸マンションの平均賃料は8万1,100円、賃貸アパートの平均賃料は5万9,200円で、対前月比・前年比ともにほぼ横ばいだった。
敷金の平均は、賃貸マンションで家賃の1.15カ月分、対前月比マイナス0.6%、対前年比マイナス5.7%だった。賃貸アパートでは、家賃の0.93カ月分、対前月比マイナス0.9%、対前年比マイナス6.1%となり、いずれも下落傾向にあった。
礼金の平均も同様に、賃貸マンションでは家賃の0.56カ月分、対前月比マイナス1.5%、対前年比マイナス7.6%。賃貸アパートでは家賃の0.52カ月分、対前月比マイナス1.8%、対前年比マイナス10.3%となり、下落傾向にあった。
家賃こそ横ばいを保っているが、敷金や礼金がゼロの物件増加により、不動産賃貸業をとりまく環境が悪化している様子がうかがえる。
一方で、家賃がもったいないという理由で、家を買う人々もいるようだ。
同社が8月29日にホームページ上で発表した「家を買う理由ランキング」によると、「購入のきっかけ(2011年1月〜2012年3月、複数回答)」で、最も多かったのは「賃貸では家賃がもったいないと思った」で、全体の57.8%の人が理由に挙げていた。世代別にまとめたデータでも全ての世代でトップとなっており、特に20代(72.1%)と30代(60.9%)の若い世代で多くの人が理由に挙げていた。
家賃が割高と感じる人が増えると、家賃の値上げは難しくなる。今後は、少子高齢化で人口減少が予想される中、賃貸需要の減少も予想されることから、マンションやアパートの賃貸経営は、当面厳しい状況が続きそうだ。
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金融機関同様、高齢者をターゲットにしてくる業種の代表格は「不動産業」です。
高齢者の「資産運用」「相続対策」・・・と謳って、賃貸住宅の建設などを勧誘してくることが多いものです。
最近では、相続税の基礎控除の改正も迫りつつあることも、不動産業者が高齢者を積極的に勧誘する一因となっています。
確かに相続対策には、賃貸経営などを上手に利用することで相当な効果が上げられるケースがあることは言うまでもありません。
<勧誘時には、リスクは隠して、良いことしか言いません!>
一方「不景気の長期化」・「高齢化」などの影響から、上記の記事のように、近年不動産賃貸業のリスクは、かつてなく高くなってきているというようなことは、不動産業者は勧誘時には殆ど語りません。
高まる「賃料踏み倒しリスク」は全く度外視した収支予想に基づき資金計画を立てた賃貸経営は、短期的にはうまく行く様に思えても、いずれ破綻してしまう結果に至ります。
不動産業は、金融機関以上にコンプライアンスに欠け、荒っぽい業界であることは周知の事実です!
少し前までは「千三つ屋」と呼ばれる業界であったことは覚えておいた方が良いでしょう。(・・・千のうち三つしか本当のことを言わないという意味)
少し理解力・判断力が衰えてきた高齢者など、赤子の腕をひねる様にダマされてしまいます。
不動産の場合、金融商品以上にそのもたらす結果は、取り返しがつかず深刻な事態に至ることが少なくありませんので、高齢者本人はモチロン・・・ご家族も十分に気を付け、高齢者の不動産取引には必要な関与を怠らないようにしましょう。
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