医師による任意の届け出件数
認知症やてんかんなど運転に支障がある病気や症状を持ったドライバーを診察した場合に、医師が都道府県の公安委員会に連絡する届け出制度が導入された2014年以降、届け出件数が年間百数十件にとどまり、17年は146件だったことが警察庁への取材で判明した。高齢ドライバーらによる事故が多発する中、医師の協力を得て運転に支障があれば運転しないよう促すのが狙いだが、周知不足などで伸び悩んでいる実態が浮き彫りになった。【柿崎誠】
◇背景に周知不足
「医師による任意の届け出制度」による届け出対象は認知症やてんかん、統合失調症など。医師から届け出を受けた公安委員会は、必要に応じて免許を停止したり取り消したりすることがある。
警察庁は届け出件数を公表していないが、毎日新聞の取材に、14年(6〜12月)119件▽15年134件▽16年144件▽17年146件−−と回答した。
NPO法人「高齢者安全運転支援研究会」(東京)は、65歳以上の免許保有率や認知症の有病率から、200万人以上が認知症ドライバーかその予備軍と推定。認知症以外を含めれば届け出対象者はさらに膨らむ。一方、警察庁によると17年の免許の自主返納者は42万3800人だった。
警察側は、運転に問題がある患者に医師から自主返納を促してもらい、それでも応じなければ届け出てもらうことで事故が減らせると期待する。だが届け出ることで患者との信頼関係が損なわれると危惧する医師は多い。認知症患者と車の運転に詳しい高知大医学部の上村(かみむら)直人講師は「制度そのものや対象となっている病気を知らない医師も少なくない。制度の周知が必要だ」と指摘する。
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届け出件数について、九州・山口と沖縄の9県警にも取材した。鹿児島県警以外から回答を得られ、8県の合計は▽14年(6〜12月)52件▽15年35件▽16年28件▽17年33件−−だった。
8県警には、警察庁が明らかにしていない病気や症状別の件数も尋ね、佐賀、長崎、熊本、宮崎、沖縄、山口の6県警が回答。それによると、14年6月〜17年の6県警の届け出総数114件のうち最多は認知症の42件で、統合失調症が39件、てんかんが6件だった。
【ことば】医師による任意の届け出制度
2014年6月の改正道路交通法施行に伴い導入された。届け出を受けた公安委員会は、対象者の免許証を暫定停止処分とした上で、臨時適性検査や医師の診断書に基づき、免許取り消しや停止を判断する。アルコール依存症や麻薬、覚醒剤の中毒、睡眠障害なども対象になる。制度に基づいた届け出は医師の守秘義務違反には問われない。
◇解説 さらなる環境整備を
2014年の道路交通法改正前は、警察側が運転手の病気の有無を把握するには自己申告に頼るしかなかった。法改正で医師による届け出という新たな手段を得たが、医師の間には元々患者の情報を伝えることに抵抗があった。届け出件数は警察側が期待するほど伸びていないのが現実だ。
もっとも、数字だけをもって効果がないと結論付けるのは早計だ。てんかんや認知症の複数の専門医は「届け出制度を説明すると自ら運転免許を返納する患者も多い」と話す。
専門医らが言う通り、患者が納得して自主返納すればそれが理想だ。今年2月に福岡・南署から協力要請を受けた福岡赤十字病院(福岡市南区)は、医師がまずは本人や家族に自主返納を促し、それでも応じない場合に届け出ることにしている。寺坂礼治院長は「届け出をためらう医師も多いが、病気を放置し重大な事故になってはいけない」と指摘する。
そもそも制度ができた背景には、小学生6人が死亡した栃木県鹿沼市の事故(11年)や、京都市の繁華街で19人が死傷した事故(12年)など、いずれもてんかんを隠して免許を取得した運転手の発作による事故が相次いだことがある。
制度導入に合わせ、大分県警は届け出専用の電話「ドクターライン」を運転免許センターに設置した。悲惨な事故を少しでも減らすため、届け出後に医師以外の専門家らも交えて運転の可否を総合的に判断する組織を設置するなど、医師が「最終手段」として届け出しやすくする環境整備も警察には求められる。
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👀 上記の記事を読んで、認知症の運転問題に対する一つの取り組みである「医師による任意の届け出制度」も少しづつ進展している事は素晴らしいことと思います。
しかし、一方では、2017年の一年間で146件ということですから、認知症の高齢者の人数などと比較すると、現実的には解決策とはなり得ない現状があることも痛感させられます。
そもそも道交法でも認知症と診断された者は「免許取消」「免許停止」になることになっていますが・・・
実際の法の運用上は、そうなりません。
警察に相談しても、先ずは自主返納を勧められます。
上記の記事における「医師による任意の届け出制度」においても「届出」ること自体というよりは、その様な制度があることを口実に「自主返納」を勧めて居るのが実態でしょう。
そして、単純に自分の意思で返納する者や、種々の対策を口実とした絡め手で返納する者を含め「〜警察庁によると17年の免許の自主返納者は42万3800人だった〜」ということです。
42万人というと一見多いように思いますが・・・
高齢者の人口や免許保有者数、高齢者人口の増加数などを考慮すると全然足りないというのが、実感です。
逆に言えば、いろいろな策を講じてもこの程度しか自主返納者がいないことに、やはり高齢者、特に認知症高齢者の運転問題の解決の難しさを改めて実感させられます。
認知症高齢者は病識も無い場合が多く、家族でも自主返納させることは容易ではないことを考えると、やはり「認知症」の場合は、もう少し一律にスムーズに免許の取消ができる方策がないものかと思いますね。
👀 自主返納一辺倒でなく、認知症患者からスムースに運転免許取消する方策を考えて欲しいものです。本当は認知症であれば、免許取消なのに、現状では事実上運転可能となってしまい逆に「逮捕」の憂き目に遭うことに・・・
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<認知症の疑いも運転続ける、69歳男性を“異例の逮捕”> 2018/8/6 TBS News i Copyright(C) Japan News Network. All rights reserved.
認知症の疑いが強い69歳の男性が周囲の説得を聞かずに車の運転を続けたため、事故の危険性が高いと判断した警察が異例の逮捕に踏み切っていたことが分かりました。
警察や親族によりますと、逮捕された神奈川県鎌倉市に住む69歳の男性は、10年ほど前から認知症が疑われる症状が進み、車で出かけて帰り道が分からなくなるなどのトラブルが相次いでいました。
親族などが運転を止めるよう注意しても聞かず、先月、車検を更新しようと、自動車販売店を訪れました。ところが、車検はすでに切れていたうえ、明らかに認知症を疑わせる言動があったため、販売店が警察に相談。警察も運転を止めるよう説得しましたが、男性は応じませんでした。こうしたことから、警察は「事故を防ぐにはやむを得ない」として、先月30日、男性が自宅を車で出た際に、車検切れのまま運転した疑いで現行犯逮捕し、車を押収しました。こうした対応は極めて異例で、 男性は翌日釈放されています。
「事故を起こすことが一番心配。ひとさまの命を奪っちゃうことになったら、これは大変」(逮捕された男性の弟)
逮捕後、医師の診察を受け、認知症と診断されましたが、その結果も男性本人は認めようとしないということで、親族も「逮捕はやむを得なかった」と話しています。
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